企業の健康経営が注目されている昨今、女性従業員の健康を支援する仕組みが必要とされています。月経・妊娠・出産・更年期などのライフステージの変化に伴う心身の不調は、仕事の継続やパフォーマンスに影響しやすく、企業の人材戦略にも直結します。
厚生労働省は「働く女性の健康支援は企業の重要課題」と明示しており、経営層が主体的に取り組むことが求められています。(厚労省:働く女性の健康支援 https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/business-efforts.html)
1. 健康経営における産業医の役割
産業医は、健康経営を推進するうえでの中核的パートナーです。単に法定業務を遂行するだけでなく、従業員の健康データを分析し、職場環境・勤務への配慮・メンタルヘルス支援まで幅広く助言します。
具体的には以下のような役割が挙げられます。
・健康診断結果に基づく就業措置(治療の受診勧奨、時間外労働の制限、作業制限等)
・ストレスチェック後の面接指導・集団分析による職場改善
・女性従業員の健康課題への対応策助言(PMS、更年期、不妊治療など)
・職場環境・勤務制度に関する経営層への提案(在宅勤務、勤務時間柔軟化など)
こうした活動を通じて、産業医は「個人の健康管理」から「組織全体の健康マネジメント」へと役割を拡張し、健康経営の実行力を高める存在になります。
2. 女性従業員の健康支援を制度に組み込む
健康経営を進める上では、女性の健康を個人の自己管理に任せるのではなく、企業制度として支援する仕組みが必要です。以下のようなステップで、産業医と連携しながら職場環境を整備することが推奨されます。
ステップ | 実践内容 | 期待効果 |
① 現状把握 | 産業医・保健師による面談やアンケートで課題を明確化 | 健康課題を可視化 |
② 制度整備 | 生理休暇・不妊治療通院支援・婦人科検診補助などを導入 | 離職防止・満足度向上 |
③ 教育と啓発 | 管理職研修・女性向けセルフケア講座を実施 | ヘルスリテラシー向上 |
④ データ分析と改善 | 産業医が健康データ・離職率等をモニタリング | PDCA型健康経営の定着 |
3. 産業医とつくる、ウェルビーイング経営へ
女性従業員への健康支援は、福利厚生にとどまらず、企業の成長を支える重要な取り組みです。
産業医と企業が連携することで、ストレスや体調変化を早期に発見し、働き方の調整や相談体制を整えることができます。厚生労働省は、産業医を活用した職場改善を「労働者の心と体の健康保持増進の基本」と位置づけています。
これからは「健康経営 × 産業医 × 女性支援」が連携し、従業員のウェルビーイングを大切にする職場が、企業の価値を高める時代になるでしょう。
参考出典
・厚生労働省「働く女性の健康支援」
・厚生労働省「産業医ができること」(2024年版)
・経済産業省「健康経営における女性の健康課題に対する取組事例集」
・厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
働く女性のためのウェルビーイング編集部