
ライフステージごとの体の変化や健康リスクについて、厚生労働省の指針・医学的なエビデンスに基づいて、産業医がわかりやすく解説します。
「なんとなく体がつらい」「相談していいのかな?」と感じたとき、ぜひ気軽に読んでみてください。
1. はじめに ― 女性の体はライフステージで変わる
女性の体は、男性と大きく異なる特徴があります。それは「女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が生涯を通じて大きく変動する」という点です。この変動が月経・妊娠・更年期など、さまざまな体調変化として現れます。
日本産科婦人科学会の調査では、20〜50代の働く女性の約8割が、月経や更年期などのホルモン変動に起因する何らかの体調不良を経験していると報告されています。
こうした体の変化は「個人の問題」と捉えがちですが、自分自身が正しい知識を持ち、職場のサポートを上手に活用するなどの工夫により、元気に長く働き続けることが可能になります。
今回は、ライフステージ別に「よくある健康課題」「産業医にできること」「あなたにできること」を具体的にお伝えします。
2. ライフステージ別の健康課題
《Stage 1》20代前半 月経・PMS・貧血に注意しましょう
この時期によくある症状
- 月経痛(生理痛)
- 月経前症候群(PMS):イライラ、むくみ、頭痛など
- 貧血(特に月経量が多い方)
- 不規則な生活習慣による体調不良
厚生労働省「女性の健康の包括的支援に関する基本方針」では、月経に関連する不調(月経痛・PMS)は多くの女性に見られ、仕事のパフォーマンスや欠勤率に影響するとされています。月経困難症は婦人科での治療対象であり、「我慢するもの」ではありません。
産業医にできること
- 勤務上の配慮(業務負担の一時的な軽減など)を会社に提案できます
- 鉄分不足・睡眠・食事などのセルフケアをアドバイスします
▶ あなたへのアドバイス
「生理痛は当たり前」と我慢しないでください。強い痛みや出血量が多い場合は、子宮内膜症や子宮筋腫が隠れていることがあります。早めに婦人科を受診しましょう。鉄分(レバー・ほうれん草・小魚)と十分な睡眠も忘れずに!
《Stage 2》20代後半〜30代 妊娠・出産・不妊治療と仕事の両立
この時期によくある課題
- 妊娠中の体調変化(つわり、腰痛、むくみなど)
- 不妊治療と通院の両立
- 産後のホルモン変動とメンタル不調
- 育児と仕事の両立ストレス
厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カード」制度に基づき、産科医・助産師の指示のもと、妊娠中の従業員への就業制限や配慮が義務付けられています(男女雇用機会均等法 第12・13条)。また、産後うつは出産後1年以内の女性の約10〜15%に発症するとされており(日本産婦人科医会)、職場での早期支援が重要です。
産業医にできること
- 母性健康管理指導事項連絡カードをもとに、職場への就業配慮を提案(ラッシュ時間を避けた通勤、長時間労働の制限、休息時間の増加、軽作業への変更等)
- 不妊治療中の通院スケジュールに関する配慮を検討
- 産後復職時のメンタルヘルスフォローアップ
▶ あなたへのアドバイス
妊娠・不妊治療は「隠さなければならないこと」ではありません。産業医や人事担当者に相談することで、具体的な配慮が受けられます。
《Stage 3》30〜40代 多重負担とメンタルヘルスに注意
この時期によくある課題
- 慢性的な疲労・睡眠不足
- 育児と仕事の「ダブルケア」による燃え尽き
- 産後うつの遷延・育児不安
- 自分の健康を後回しにしがち
厚生労働省「令和4年版 働く女性の実情」によると、30〜40代女性は仕事と育児の二重負担が最も高まる時期であり、精神的な疲弊感や職場ストレスが顕著に増加します。メンタルヘルス不調による休職者の中でも、この年代の女性が多いことが示されています。
産業医にできること
- 定期的な面談で心身の状態を確認します
- 必要に応じて休職・時短・業務調整を提案します
- 復職支援プログラムの設計・実施をサポートします
▶ あなたへのアドバイス
「ちょっとつらい」「眠れない日が続いている」と感じたら、それは早期サインです。「もっとひどくなってから相談しよう」ではなく、早めに産業医や保健師に相談してください。あなたが元気でいることが、家族にとっても職場にとっても一番大切です。
《Stage 4》40代後半〜50代 更年期症状を正しく理解する
更年期とは?
更年期とは、閉経(平均年齢約50歳)の前後10年間を指します(日本産科婦人科学会)。この時期、卵巣機能が低下しエストロゲンが急減するため、さまざまな身体症状・精神症状が現れることがあります。
- ホットフラッシュ(突然の熱感・発汗)
- 不眠・睡眠の質の低下
- 気分の落ち込み・イライラ
- 集中力・記憶力の低下
- 関節痛・肩こりの悪化
日本更年期・加齢ヘルスケア学会によると、更年期症状を持つ女性の約6割が仕事のパフォーマンス低下を実感しており、約3割が休職や退職を考えたことがあると報告されています。ホルモン補充療法(HRT)は、適切に使用することで症状の大幅な改善が期待できる有効な治療法です(厚生労働省 更年期障害治療ガイドライン)。
産業医にできること
- 室温調整・休憩の確保など職場環境の改善を会社に提案します
- 更年期症状を「怠け」と誤解されないよう、管理職への教育支援も行います
▶あなたへのアドバイス
更年期の症状は「年のせい」「気のせい」ではありません。治療で改善できる可能性があります。症状を放置せず、産業医に相談、婦人科の受診をしましょう。ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬など、あなたに合った選択肢があります。
《Stage 5》50代以降 生活習慣病とがん検診を忘れずに
この時期のリスク
女性ホルモン(エストロゲン)には、骨や血管を守る働きがあります。閉経後はその保護効果が失われるため、以下のリスクが高まります。
- 骨粗しょう症(閉経後女性の約3人に1人:日本骨粗鬆症学会)
- 高血圧・脂質異常症(動脈硬化リスク上昇)
- 乳がん(50代がピーク:国立がん研究センター)
- 大腸がん・子宮体がんのリスク増加
厚生労働省「がん対策推進基本計画」では、乳がん検診(マンモグラフィ)を40歳以上の女性に2年に1回、子宮頸がん検診を20歳以上に2年に1回受けることを推奨しています。(問診、視診、子宮頸部細胞診等の実施)骨密度検査も、閉経後や骨折リスクのある方に定期的な検査が勧められています。
産業医にできること
- 健康診断の結果をもとに、生活習慣改善の具体的なアドバイスを行います
- 必要に応じて専門科への受診勧奨を行います
- 必要に応じて就業上の配慮を事業者へ意見します。(検査結果や、病名などの詳細な医療情報を本人の同意なく事業者に提供することはありません)
▶ あなたへのアドバイス
「まだ元気だから大丈夫」と検診を先延ばしにしていませんか?乳がんや大腸がんは、早期発見できれば治癒率が大幅に向上します。年1回の健康診断プラス、がん検診を受けることをお勧めします。カルシウム(乳製品・小魚)とビタミンD(日光浴)で骨を守ることも大切です。
3. 産業医への相談 ― こんなときに相談してください。
「産業医に相談していいのかな?」と迷う必要はありません。次のようなときは、ぜひ気軽に相談してください。
| ▶ 体のこと
・月経痛がひどくて仕事に集中できない ・妊娠中で体調が不安 ・更年期の症状で眠れない ・健診の結果が気になる |
▶ 心のこと・働き方のこと
・気分が落ち込んで職場に行くのがつらい ・育児との両立で限界を感じている ・長時間労働が続いている ・どこの科を受診すればよいかわからない |
プライバシーについて
産業医との面談内容は、守秘義務により厳しく保護されています。あなたの同意なく、上司や人事に個人情報が伝わることはありません。安心してご相談ください。
4. まとめ ― 自分を大切にすることが、いちばんの健康管理
働く女性の体は、ライフステージとともに変化し続けます。その変化を「仕方ない」「我慢するしかない」と放置せず、正しい知識と適切なサポートで乗り越えていくことが大切です。
| ① 早めに相談する
小さなサインも見逃さない |
② 正しい知識を持つ
体の変化を理解する |
③ 職場を活用する
産業医に相談・社内制度を使う |
あなたが健康でいることが、職場全体の力になります。
産業医:もちづき内科クリニック院長 望月香織監修
働く女性のためのウェルビーイング編集部
【参考資料・エビデンス出典】
- 厚生労働省「女性の健康の包括的支援に関する基本方針」
- 厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カード」制度(男女雇用機会均等法 第12・13条)
- 厚生労働省「令和4年版 働く女性の実情」
- 厚生労働省「がん対策推進基本計画」
- 日本産科婦人科学会「月経困難症・子宮内膜症の診療ガイドライン」
- 日本産婦人科医会「産後うつの実態と対応」
- 日本更年期・加齢ヘルスケア学会「更年期症状と職場パフォーマンスに関する調査報告」
- 日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」
- 国立がん研究センター「がん統計・乳がん罹患データ」

働く女性が職場で安心して働くためには、ウェルビーイングの実現が不可欠です。女性特有の心身の不調やライフイベントに配慮した産業医のサポートは、企業にとって重要な施策です。
株式会社メディエイト(https://mediate.jp)は、こうした課題に対応するため、全国対応・女性産業医多数という強みを持った産業医紹介サービスを提供しています。
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